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サウンドプロデューサー重盛美晴インタビュー【後編】60歳を目前に思う「楽が一番」

2022年に結成30周年を迎えたロックバンド、PENICILLINを活動初期から支えている重盛美晴さん。インタビュー後編は、サウンドプロデュース以外の現在の活動や、人生のターニングポイント、60歳を目前にした心境などを聞いた。シゲさんが幸せを感じる瞬間、今後のビジョンとは?

前編記事はこちら→サウンドプロデューサー重盛美晴インタビュー【前編】30周年を迎えたPENICILLINとの関係。年を取ってからわかること

重盛美晴
1990年、STILL ALIVEのギタリストとしてメジャーデビュー。洋楽志向の本格派サウンドで、海外ツアーやDeep Purpleの日本武道館公演オープニングアクトを務めるなど活躍。その後、様々なアーティストの楽曲アレンジ等を手掛け、現在はサウンドプロデューサーとして活動。初期からプロデュースしているバンド、PENICILLINは2022年2月に結成30周年を迎えた。また、PENICILLIN千聖のソロプロジェクト、Crack6のギタリストも務める。
目次

普段の自分ではない自分になれる

千聖さんのソロプロジェクトCrack6も2023年で20周年を迎えます。様々なミュージシャンが参加してきたプロジェクトですが、シゲさんは唯一、活動スタート時からのメンバー(SHIGE ROCKS/G&サウンドプロデューサー)ですよね。衣装、メイク、プレイも、あのスタイルで表に立ち続けるのはすごいことだと思います。

重盛
大変ですよ…(苦笑)! 普段と変わらない格好でステージに立つ人もたくさんいますけど、自分の場合は普段とステージは違うほうがいいんじゃないかなと思うんですよね。表現する場だし。ああいう場があると、普段の自分ではない自分になれるというか「変身したから頑張るしかないな」という感じでやっています(笑)。

ライブの後、筋肉痛になったりはしますか?

重盛
いや、あまりならないですね…と言いたいところですね(笑)。最近ストレッチはほぼ毎日やっているので、昔より少し体は楽かもしれません。と言っても本格的にストレッチを何十分もやっているわけではなくて、本当に2〜3分です。毎日続けることが大切ですよね。

ところで、あのフルメイクはいつ頃からやっているんですか?

重盛
多分、白塗りにしたのはCrack6の2回目のライブからです。当時、Limp Bizkitというアメリカのバンドが売れていて、ギターのウェス・ボーランドが結構いろんなメイクをする人だったのもあって、千聖からの提案でした。元々KISSとかが好きだったので、全然抵抗なくやりましたね。いつも自分でメイクをしています。

めちゃくちゃ上手ですし、バリエーションも豊富ですよね。

重盛
飽きられないように(苦笑)以前のものから少し修正する場合もあるし、新しいことをやってみようと思ったり、結構オタクっぽい気質があるから楽しめちゃうんですよね。いつもハロウィンみたいな感じです(笑)。

SHIGE ROCKS(Crack6)

続ける秘訣は好きなことをやる

2018年7月には同世代のメンバーとserial circusを結成しましたが、どんな経緯だったんでしょう?

重盛
yazz(Vo)はSTILL ALIVEの頃から知っていたんですけど、数年前にイベントに遊びに行った時に会って、その約1年後にyazzから連絡が来て、相談があると。それで、「シゲさん、ギター弾いてくださいよ」と言われたんですよね。

50代になってから新しいバンドを組むのは、色々な面で体力が必要なことだと思います。

重盛
要りますね(苦笑)。「仕事もあるからスケジュールは合わせてもらわないとできないけど、大丈夫? それでも良ければやるよ」と言って、それを条件に始めました。実際やってみて楽しかったですけど、コロナの影響などで動きづらくなったり、スケジュールが合わなかったりで、活動が難しくなり現在休止状態ですね。

30年続いているPENICILLINのすごさを感じます。

重盛
続いているからできることもあるんですよ。お互いのことを理解しているし。だから、やっぱり続けるって大事だなと思いますね。

続ける秘訣は何だと思いますか?

重盛
好きなことをやるということが良いんじゃないですか。何か妨害があっても、それは結局自分のテンションが上がるから、また力になるし。ただ、楽しく考えて、楽しく受け止めるというか。難しいですけどね(苦笑)。絶対にやらなくてはいけない!とか思わないほうが良いと思います。もちろん取り組んでいる時はストイックなんですけど、疲れても「あー、疲れるけど楽しいなぁ」と思うと、何か違うんですよね。それを義務的にやっちゃうと、楽しくなくなっちゃうというか。何か一つでも発見みたいなものをできるようにアンテナを張ったりして。

なるほど。

重盛
「こう言われて、こんなふうに思っちゃったけど、これって子供だな」とか、「相手はもしかしたら違うことを言いたくて、そういう言い方をしたのかもしれないけど、俺が誤解したのかもしれない」とか、考え方次第でいろんなふうに取れるじゃないですか。だから、そういう反省も必ずします。でも楽しいと思うと、また続けようと思うから、多分それが大事なんじゃないですかね。

ちょっとの幸せがいっぱいあることへの感謝

改めて振り返ってみて、シゲさんにとってこれまでの人生のターニングポイントとは?

重盛
自分が表に立つ側のミュージシャンから、一歩引いて陰から支えるというポジションになったことがターニングポイントですね。こっちのほうが向いているかもしれないなと思いました。

7月にいよいよ60歳を迎えますが、30歳、40歳、50歳を迎えた時と、60歳を迎える今、心境の違いはありますか?

重盛
あと残りが少ないなぁと思うくらい(笑)。60歳というと定年とか、いわゆるフェードアウトに向かってくださいみたいな感じがありますけど、あまりそういうことは考えていないですね。それと、4年ほど前に離●したということも一つ大きな出来事でした。相手が悪い、自分が悪いとかではなく、合わなかっただけだと思っています。生活も変わりましたけど、一人なので、すごく自分のことを考えるようになりましたし、楽になりました。なんて(笑)。

少し前に「最近は、なるべく楽に行こうと思うと楽にいけるような気がしてます。何十年前?の自分は「そんなの許さん」と思っていましたけど」とツイートしていましたよね。

重盛
よく見つけましたね(笑)。若い時はどうしてもすごく構えちゃうことが多かったので、上手くいかないこともいっぱいあって。昔は「しょうがないか〜」と思っていたんですけど、最近はそれじゃダメだなと思って、何でも楽にいこうと。なすがままにじゃないですけど、そういう流れに乗っていこうという気持ちになりましたね。あれもやらなきゃ、これもやらなきゃと考えて準備しようと思うと、気が重いじゃないですか。そういうのは良くないなと思って。「まぁ、やってみよっか」くらいの軽い気持ちで、どんなこともなるべく構えないでいこうと思っています。

今、幸せを感じる瞬間はどんな時ですか?

重盛
好きなことをやっている時に集中できることが幸せですね。

幸せを感じるポイントは、年齢を重ねるとともに変化しましたか?

重盛
変わったかもしれない。昔は夢みたいなことに近付くと、それが幸せだと思っていたけど、今は日々の小さな普通のよくあることが、「あぁ、いいなぁ」と思えるようになりました。ちょっとの幸せがいっぱいある。それに感謝して生きたほうがいいなと思います。

60代をどう生きるか、プランや目標などはありますか?

重盛
もう楽に、楽しく生きたいですね。最終的には、可愛いおじいちゃんになりたいです。

ちゃらんぽらんとは違う「楽」

ところで、コロナ禍での音楽業界をどう感じていますか?

重盛
やっぱり人間って、天災みたいなものに弱いなと思いました。これだけ大きなことはなかなかないですけど、こういうことって普段も色々とあるわけで。だから、何かの鍛錬のようなものだと思っています。大変な人はごまんと居ると思うし、そんな軽く言ったら怒られるかもしれないですけど、やれることをやるしかないですよね。ちなみに昨年、自分のYouTubeチャンネルを立ち上げたんですよ。

remix音源をアップしていますよね。創作意欲が湧いて、始めたくなったのでしょうか?

重盛
そうそう、そうなんですよ。これは9割趣味で、1割は宣伝ツールです。もう本当に楽しいですよ〜。今、第4弾を作っている最中なんですけど、昨日は耳が疲れちゃっているのに、ついやり過ぎて失敗しました。もうすぐアップしますよ。(※取材後アップされたものがこちら

シゲさんの生活、人生は音楽一色ですね。他に何か趣味や最近やっていることはありますか?

重盛
音楽以外だと観葉植物かな。手間がかからないというのが良いですね。でも、ちゃんと生き物だし。「いつもありがとう。おはよう」と言っています(苦笑)。

それにしても、ずっと好きな音楽に囲まれて生きられるというのは、最高の人生ですね。

重盛
楽しいですよ。本気でやるから、自分のスキルを上げることもできるし。そこが大事なんですよね。すごく貪欲というわけではないですけど、少しずつでもできるようになるのが楽しいです。

楽しいのが一番、というのは真理だなと思います。

重盛
楽しい、楽、これが一番です。無理はしない。ただ、ちゃらんぽらんとは違いますよ。でもなるべく楽に、というのが長く続く要因かなと思います。

ライブ情報
PENICILLIN 30th anniversary 関東サーキット2022「The Time Machine」

  • 4月2日(土)新横浜NEW SIDE BEACH!!
  • 4月16日(土)HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3
  • 4月17日(日)柏PALOOZA
  • 4月23日(土)東京キネマ倶楽部

※全公演、生配信あり

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取材・文=金多賀 歩美

※掲載の内容は、記事公開時点のものです。情報に誤りがあればご報告ください。
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