かっこよい人

久本雅美インタビュー【後編】
「生涯 現役」を貫く60代の私の歩き方

前編のインタビューでは、傑作ギャグ「ヨロちくび~!」の誕生秘話から、「未婚キャラ」を確立するまでの経緯などについて語ってくれた久本雅美さん。
後編ではご両親とのお別れについて、それから60代になってもイキイキと生きる方法などについて聞いてみよう。読めば元気になる爆笑インタビューだ!

前編記事はこちら→久本雅美インタビュー【前編】60代になっても結婚あきらめてませ~ん宣言

久本雅美(ひさもと・まさみ)
1958年7月9日生まれ、大阪府出身。劇団東京ヴォードヴィルショーを経て、1984年に柴田理恵らと劇団『WAHAHA本舗』を結成する。軽妙なトークで人気を博し、『秘密のケンミンSHOW』『ヒルナンデス!』(ともに日テレ系)など数多くのバラエティ番組に出演。女優としても活躍する。
目次

しみじみと受け入れる
ことのできた「母との別れ」

年を重ねると、どうしても経験しなければならないのが「親の死」ですよね。久本さんの場合、どんな風にそれがやってきましたか?

久本
最初は、母との別れでした。母が67歳、私が41歳のとき。

末期がんで、余命3カ月という告知を受けたんですが、それからなんと4年も命を延ばしたんです。そんなわけで突然のお別れではなかったから、気持ちの整理をつけやすかったと思います。

亡くなる数カ月前には、家族全員で母の故郷の徳島に行って、親戚へのあいさつ回りもすることができました。
そんなある日、母は「シャワー浴びたい」と言ってシャワーを浴びて、大好きな日本茶を一杯飲んで、「ちょっと横になるね」と言って、眠っている間に静かに逝きました。

もう二度と母の声を聞けない、生きている姿に触れることができないという意味では寂しいことなんだけど、お母ちゃん、なんで死んだんやっていう恨みや泣き言のようなものはありませんでした。それよりむしろ、母が自分の人生を生き抜いて、最期に安らかに世を去ったことを誇りに思いました。お母ちゃん、ありがとー! お疲れさまー! っていう気持ちですね。

かつて、テレビの番組に両親と出演したことがありました。そのとき、司会の方の「娘さんの芸を見て恥ずかしくなりませんか?」という質問に母は、こう答えたんです。

「10人中10人に好かれるのはむずかしい。でも、1人か2人、娘を見て元気になってくれる人がいると思います。そう思って誠実に頑張ってもらいたい」と。
この言葉は、今でも私を支えてくれる大事な言葉です。

父の葬儀では、姉妹で
ドッカーンと笑いをとりました

お父さんとの別れは、3年前の2019年だったそうですね?

久本
そうです。たまたま大阪で仕事があって、久しぶりに実家に帰っていたときのこと。近くの施設で暮らしていた父の見舞いをした夜、実家で寝ていたら、明け方5時くらいに「お父ちゃんの様子がおかしい」と施設から連絡が入ったことを弟から知らされました。あわてて施設にかけつけると、父はすでに亡くなっていました。

当時の父は足腰も弱っていて、ぼーっとする時間も長くなっていたから、こんな日が来ることの覚悟はできていました。母のときと同様、取り乱すこともなく、「お父ちゃん、お疲れ-! ありがとう」と明るくお別れを言うことができました。
施設に入る前の父は、いろいろなところを旅行したりしていましたし、人生で自分がやりたいことはすべてやり尽くした人だと言えるでしょう。

印象的だったのは、父の葬儀でのこと。喪主をつとめた弟が、参列者へのあいさつでこんなことを言ったんです。
「民謡の名取だった父は、『お立ち酒』を歌えなかったことだけが、心残りだったと思います」と。「お立ち酒」とは、娘を嫁にやる父親の心境を歌った民謡のことです。

つまり、私も妹(「久本のキレイな方」でお馴染み、歌手でタレントの久本朋子さん)も独身で、花嫁姿を父に見せてあげられなかったことを遠回しに指摘したわけです。

この言葉を聞いた私と妹はすかさず、祭壇に向かって声を合わせて「どうも、すんませーん!」と頭を下げました。すると、会場中がドッカーンと大爆笑。おかげで、近所や親族の人気者だったお父ちゃんらしい、最後まで笑いの絶えない葬儀になりました。

この年になると
原状維持には努力が必要なんです

ところで、2021年の7月9日に久本さんは63歳になりました。心身ともに衰えを感じることはありますか?

久本
そんなの、日常茶飯事です。特に63歳という年齢は、母が闘病を始めた年齢でもあるので、自分の健康のことは意識してしまいますよね。
そこで、週に1回の筋トレのパーソナルトレーニングを4、5年くらい前に始めました。

筋トレといっても、ムキムキの体を作るためのトレーニングじゃなくて、ケガをしない体を作るのが最大の目的。忙しくて体の疲れがひどいときは、体の歪みを整えたり、凝り固まった筋肉をほぐすストレッチやマッサージだけやってもらうこともあります。

それから、50代後半で声の衰えを感じてから始めたのがボイストレーニング。これから先、舞台の仕事を続けていくための基礎的な声の訓練と、本番でベストパフォーマンスを発揮するためのトレーニングです。

この年になると、今の体の状態を維持するには努力が必要なんです。階段でも、若いころにはポンポンポンポーンと元気に駆け下りてたけど、今は一段一段、転ばないように注意深く踏みしめないといけません。

60代になって、「老いキャラ」
というおもしろアイテムをもらった

メンタル面での衰えを感じることはありませんか? 例えば、落ち込んだ後に立ち直るのに時間がかかったり。

久本
それはないかな。むしろ、メンタル面ではこれまで積み重ねてきた経験から、自分の心との向き合い方は上手になったような気がする。体力が衰えて、寂しいなぁと感じる反面、「年なんだからしょーがないよ」と開きなおれるようになりました。
できないことを数えるんじゃなくて、今でもまだできることを改めて見直して磨いていこうと思ったほうがいいじゃないですか。

久本さんにとって、年をとってよかったなぁと思うことがあるとすれば、何でしょう?

久本
「未婚キャラ」に加えて、「老いキャラ」というおもしろアイテムをもらったってことかな。

最近、さすがに耳の聞こえが悪くて、特にイベントなどの舞台に上がるとマイクの声が聞きとりづらくて変な間違いをしたりするんですけど、「すいませーん、還暦過ぎてるんで」ってフォローしただけで笑いをとれたりして。

そういえば先日、病院の検査で全身麻酔を打ったことがあるんです。後日、先生から聞かされて笑っちゃったんですが、麻酔が効く最後の瞬間に私は「生涯現役でいたいです」って言ったんだって。あの瞬間って、人間の本心が現れるんだそうなんですよね。
ならば、自分の「生涯現役」を実現するために今のうちからできるだけ心身を鍛えておくことが大事なんだと再認識しました。

私の葬儀は賑やかで
笑いの絶えないものにしたい

ご自身の人生の終わらせ方について、何か理想はありますか?

久本
やはり最後の最後まで、仲のいい仲間とのお酒にお付き合いできるくらいの健康と体力は維持しておきたいですね。

で、「わぁー! 楽しいねぇ」と言いながら飲んでいる途中で疲れて横になっているとき、「あれ? 姉さんの息、ちょっとおかしくない?」と後輩が気づいて、そこにいるみんなが「姉さぁーん」とか、「久本っちゃーん」とか呼びかけているシーンが思い浮かびます。聴覚というのは最期まで生きてるみたいだから、周囲のドタバタ声を聞きながら、「ありがとう。私の人生、おもしろかったよー!」と思いながら眠るようにあの世に旅立ちたい。

以前、劇団員のみんなと飲んでいるとき、そんな話をしたことがあるんです。そうしたら後輩のひとりが「姉さん、僕が弔辞を読みます!」と言った後、火がついたかのように「俺が読みます」、「私が読みます」となっていって、最後に親友の柴田(理恵)が「私が読むんだよ!」と一喝して場が収まるということがありました。持つべきものは友だよね。

最近は、家族葬のような質素なお葬式が増えているというけど、私の場合、これまでたくさんの方々にお世話になってきたので、そうした方々への感謝の意味を込めて、賑やかで楽しい葬儀になればなぁというのが理想です。

おもしろい音楽を流して、私がお笑いをやっているときの写真を貼り出したり、ビデオを流しながら、「こいつ、ホントにいろんなことをやってきたんだな」とか、「バカだなぁ」と笑ってもらって送り出してもらいたいです。

私のいちばんの財産は
「人とのつながり」

最後に「年をとっても元気に生きる方法」を久本さんなりにアドバイスしていただけませんか?

久本
なんだろうな…。私が今回のエッセイ『みんな、おひとりさま』でいちばん言いたかったことは、「自分と人とを比べないこと」なんですよね。

仕事に頑張ることを何よりも優先して、結婚への確かな覚悟がないまま、気がついたらひとりだった。そういう境遇から世間を見てみると、結婚をして子どもを持って、家族という強い絆に支えられながら生きている人は「幸せな人生」をおくっているように見えるけど、でも、私の人生にもたくさんの幸せがあるんです。

いちばん大きな幸せは、「仲間とのつながり」ですね。世間から言えば私は「おひとりさま」と呼ばれる立場なのかもしれないけど、人は決して一人で生きていけるわけではありません。特に私の場合、劇団員の仲間、男友だち、女友だち、尊敬する先輩や大好きな後輩たちなどなど、本当にたくさんの人たちとの関係の中で、お互いの幸せを祈りあったり、励ましあいながら今の自分がいるんだと思ってます。

だから、人と関わることを恐れず、つながりを大事にしていくことが日々の「元気」になるんじゃないかと思います。人とのつながりそのものが、人生を豊かにしてくれる最大のチャンスなんじゃないかな。

とても楽しいお話、どうもありがとうございます。


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もくじ
1章 ひとり暮らしの「自由と責任」
2章 ひとり身には「恋愛=希望」
3章 ひとりだから「仕事に全力投球」
4章 ひとりにしみる「家族のありがたみ」
5章 ひとりゆえに「友情は宝」
6章 ひとりで生き抜く「心の作り方」

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取材・文=内藤孝宏(ボブ内藤)
撮影=桑原克典(TFK)

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