人気絶頂期に大学へ復帰

大学時代にアルバイト先の旅館で修学旅行生相手に即興で歌を作って歌ったり、落語の小噺をやったりしていた原田さんが、レコードデビューとなり、たちまち人気者になった。当時は支離滅裂派フォークといわれ、フォーク仲間には入れてもらえなかったという。出すレコードは次々にヒットし、ラジオ、テレビとひっぱりだこだった。ステージでは、「伸郎！」と黄色い声が飛んだ。しかし、「いつまでも続けられない」と思っていた原田さんは、1975年3月、蔵前国技館でのステージを最後に「オールナイトニッポン」などのレギュラー番組をすべて休み、大学へ復帰した。

原田
せっかく親が大学へ行かせてくれたんで卒業しないとダメだと思いました。蔵前国技館でのステージ後に大学へ戻ったんです。あのねのねの原田伸郎が僕の身体から幽体離脱してワーキャー言われてる。僕はそれを冷静に見ている感じでした。1年間大学に戻り無事卒業することができました。

また仕事に復帰。出したレコードがまた大ヒットになった。「ネコニャンニャンニャン」である。昨年、TikTokで大バズリしたので知っている若い方も多いかもしれない。清水さんに「うちの孫がネコニャンニャンニャンをやって遊んでる」と聞いて、バズっていることを知ったという。

原田
好きなように振り付けできるのがいいのかもしれません。

東京から大阪へ拠点を移す

『ヤンヤン歌うスタジオ』『ものまね王座決定戦』の司会業でも忙しくなった。しかし、1回目の奥さんとの離婚後、東京から大阪に拠点を戻すことになる。

原田
大阪で個人事務所を作りました。自分のことばでしゃべれる仕事がしたいと思ってたんで、最初はラジオが中心でした。

関西に拠点を置き、MBSラジオ「ヤングタウン」、MBSテレビ「夜はクネクネ」などで人気を博した。趣味が仕事になった1988年に始まったゴルフ番組は、現在も続いている長寿番組になった。情報番組、音楽番組、旅番組、そして、あの温かい声を生かしてのナレーションと、仕事は忙しかった。ところが、52歳の時に突然、えらいことになった。ある日、奥さんが「笑うと右と左の顔が違う」という。顔の右半分の麻痺だった。その頃、ラジオの早朝番組を担当しており、それが1年半続き、睡眠不足も続いていた。パピプペポが言えない。治療に専念するために1か月の休暇を取った。幸いにも回復すると、なにかやりたくなってきた。

書家の誕生

原田
朝4時に起きるためには、夜の8時ごろに寝ればいいんでしょうが、なかなか眠れない。それが一年半ほど続いて、知らない間に疲労がたまっていたんだと思います。休養を取ったら、少しずつ良くなってきたんで、なんか始めたくなったんです。祖父が書道の先生で、父親も達筆すぎて遺書が読まれへんかった。僕も小さいころから字が上手だと褒められていたんです。お手本を真似て書くのじゃなくて自分で好きなように書いています。

そういって、見せてくれたのがこの書だ。笑いに見えるが『大丈夫』です。笑っていれば大丈夫なんだ。見ているだけで和んでくる。今では、書家として、各地で書道展を開催している。原田さんの今後の目標を聞いた。

目標は持たず、流れのままに

原田
ずっと遊びの感覚でやってきました。なんか今日は上手く遊べないなぁと思う時があります。「あっ、今日仕事してしまった、それで楽しくなかったんや」って。だから、目標は今まで持ったことがないんです。人生で大切なものは３つあると僕の大好きな喜劇王チャップリンが言うてるんですが…

1. 勇気
2. 創造力
3. 少しのお金

少しのお金てどのくらいやろねえ。

大学時代の思い出作りで始めた芸能生活が、50周年を迎えた。最後に、清水さんとの関係を聞いた。

原田
清水さんとは一度もケンカをしたことがないんです。ケンカをするときは解散する時と決めていました。お互いにべったりしない。一年先輩だった清水さんのままなんです。カチンとくることを言われても先輩やから。芸能界の入り口まで連れて来てくれたのも清水さんです。出会わなかったら今のようなことはできていなかったです。

デビュー50周年コンサートは、これから佳境にはいる。原田さんにとって清水さんは、学生時代にリスペクトしたままの清水さんである。
原田さん、今日はどうもありがとうございました。