かっこよい人

「やっぱり巣鴨っていいよね」心のふるさとであり続けたい。巣鴨地蔵通り商店街振興組合理事・木崎禎一さんインタビュー

「おばあちゃんの原宿」という別名で広く知られている街・巣鴨。

そんな巣鴨を象徴しているのが、「巣鴨地蔵通り商店街」だ。とげぬき地蔵尊が見守るこの商店街は、今日も多くの人が行き交い賑わいを見せている。

今回お話を聞くのは、そんな商店街を代々支え続けてきた、巣鴨地蔵通り商店街振興組合理事・木崎禎一さん。

昔ながらの店が並び、屋台からはいい匂いが漂う、地蔵通り商店街。
この商店街は、どうしてこんなにも懐かしく、遠い昔に置いてきてしまった何かを感じさせるのだろうか。

この地で生まれ育ち、巣鴨の歴史とともに人生を歩んできた木崎さん。そんな木崎さんだからこそ見える景色と、これまでの人生についてお伺いします。

木崎 禎一
1967年生まれ。
巣鴨に生まれ育ち、1990年に大学を卒業後、ビルの管理会社に就職。
一度会社勤めを経験したのち、巣鴨に戻り、家業を継ぎながら商店街の組合の業務も担当する。
目次

怒涛の時代に見た、父の姿

平日の夕方にもかかわらず、多くの人で賑わう「地蔵通り商店街」。そんな中、道行く住民に声をかけられながら姿をあらわした木崎さん。その様子から、長きにわたって商店街との絆を育んできた方だということが伝わってきました。そんな木崎さんは、生まれも育ちも巣鴨なんですよね。

木崎さん
そうですね。巣鴨で生まれて、小学校を卒業するまで地元にいました。その後は父と同じ中学校に行き、そのまま大学まで進学したんです。大学を卒業後は都内の会社に勤めていましたが、そこからまた巣鴨に戻ってきたんですよ。

大学卒業後は、違うお仕事をされていたんですね。

木崎さん
当時入社したのは、渋谷にあるビルの管理会社でした。私が就職活動をしていた時期は、ちょうど昭和から平成に変わるタイミングで、バブルが弾け始めていたころだったんです。とにかくいろんな会社が大きく採用活動をしていた時代だったので、ニュースでは「大手の企業に一番同期が多い世代」なんて、報道されていましたね(笑)。

ちょうど世の中の景気がいいタイミングで、就職の時期を迎えたんですね。

木崎さん
そうですね。入社するハードルが低い分、出ていく人数も多かったので、ずっと社会で人の流れがあるような時代でした。そんな時代に日本の中心部で、時代の移り変わりを経験できたのは、良かったなと思っています。

なぜ巣鴨に戻ることになったのでしょうか?

木崎さん
実家から手伝って欲しいと呼び戻されたんです。私の実家は商店街で鞄・雑貨の店舗を営んでいたのですが、当時は商店街でいろいろな取り組みが始まって、地域全体で盛り上げていこうとしていたタイミングだったんです。それもあって、父の代から、商店街全体を管理し、取り仕切る組織が発足したんです。しかし、実家の鞄・雑貨屋は父と母とアルバイトだけで切り盛りしていたので、商店街組合の業務も入ってくると大変だという理由で、私に声がかかりました。私自身は、生まれ育った街なので特に抵抗もなく、すんなりと戻ってきましたね。

組合は、お父様の代に生まれたものなんですね。

木崎さん
そうですね。父はリーダーシップがあり、周りの人間をグッと引っ張っていくような性格で、周りの人もそれについてきてくれたんだと思います。でも、私は父とはまったく性格が違うタイプなんです(笑)。私は、強い力で周りを巻き込むというよりかは、本当に周りの方たちに恵まれて、ここまでやってこれたんだと、自分では思っています。商店街は今、二代目や三代目の方が多いんです。創業者で何かを立ち上げるような人は、癖がある人が多いので、私より上の世代はもっと勢いがあり、すごかったんだろうなと思いますね。

自然と周りの人たちに愛され、親しまれているのは、木崎さんの魅力があってこそだと感じています。

木崎さん
そんなことはないです。でも、PTAの会長をしていたこともあったんですけど、そのときも周りの保護者の方たちに恵まれて、楽しんで終えることができました。人に恵まれる才能は持っているかもしれませんね。

現在は、お父様と一緒に組合と鞄・雑貨屋を経営しているんですか?

木崎さん
いえ、父は昨年の3月に亡くなりました。その日の朝まで一緒に店を開けて、いつも通り営業していたので、本当に突然のことでしたね。最期の最期まで、父はお店に立って、好きなことができたと思うので、良かったのではないかと思っています。その父の死があってから、私も今後の人生を考えるようになりました。まだ具体的に何をするというのはないのですが、これからどのように人生を歩んでいくか、計画中です。

自然と周りとの関わり合いが生まれる街・巣鴨

木崎さんは、具体的にどのように商店街に携わっているのでしょうか?

木崎さん
主な仕事は、商店街の広告宣伝ですね。イベントに関してのチラシやポスターの作成、あとは問い合わせの対応だったり、今回みたいな取材の対応ですね。

巣鴨の地蔵通り商店街は、いつも賑わっている印象があります。行われているイベントも、多いのでしょうか?

木崎さん
毎月4のつく日は縁日をやっています。巣鴨の縁日は、とげぬき地蔵様がいる高岩寺の宗教上の縁日なので、終わる時間は少し早めの夕方くらいなんです。それでも多くの方がいらっしゃってくれますね。商店街を利用する方は女性が多いので、夕方になると夕飯の支度だったり家のことをするために帰宅する方が多く、商店街を歩く人通りはいつも夜になるとグッと減ってきます。

コロナの影響はありましたか?

木崎さん
影響は甚大でしたね。人の出入りはやっと少し戻ってきましたが、店舗を利用する人は前ほど戻っていないので、お店を営業している方たちはまだまだ大変な状況です。私の実家の鞄・雑貨屋は、旅行に行く人も減ってしまったので、売り上げはまだ戻っていませんね。天気がいい日にシャッターを開けても、その日は1円も売れなかった、なんてことも未だに起きます。世の中が落ち着いて、旅行に足を伸ばす方が増えるのを願うばかりです。

実際に店頭に立っていると、お客さんの流れを直に感じますよね。

木崎さん
そうですね。でも、お客さんとの距離が近いのは、商店街の魅力のひとつだと思います。お客さんからすると、商店街の店員さんとチェーン店の店員さんでは、話すときの心持ちが全然違うんです。商品を買う買わないは別として、商店街だと、自然にあいさつをしたり、世間話が始まったりする場面をよく見かけます。飲み屋さんでも、長くお店をやっている大将だと、お客さんとの距離感が近くなったりますよね。そうやって巣鴨は普通に生活しているだけで、周りとの関わり合いが自然と生まれるような街なんです。

商店街にいる人たちは、巣鴨で生まれ育った人が多いのでしょうか?

木崎さん
多いですね。だいたい8割くらいは、巣鴨に住んで商売をしている人たちです。テレビではたまに商店街が観光地のように紹介されたりするのですが、実際にはそこまで完全に観光地化しているわけではないんです。もちろん食べ歩きなどを楽しんでもらえるようなお店もたくさんあるのですが、基本的には巣鴨で暮らしている方たちの生活感が溢れている街です。それでも、巣鴨に来てくれた方に「楽しい、おもしろい」と言ってもらえるのは嬉しいので、フラッと来た方にも変わらず楽しんでいただけるような場所であり続けたいですね。

心に温かく残る街。「やっぱり巣鴨がいいね」

「巣鴨は高齢者の街」というイメージが一般的にあると思うのですが、実際のところはどうでしょうか?

木崎さん
巣鴨で一番多い世代は50代で、全体の3割になります。高齢者しかいないというわけではないのですが、池袋や新宿に比べると多い方ではあると思いますね。商店街はお店も多く活気的ですが、少し足を伸ばすと住宅街が広がっていて、意外とファミリー層の方も多く住んでいます。

若者世代がもっと増えて欲しいという思いはありますか?

木崎さん
若い方を増やすことを目的に行っていることはありませんが、気軽に遊びに来ていただけると嬉しいですね。どちらかというと庶民に寄り添った街なので、世代問わずどんな方でも気軽に来てもらって、楽しんでいただけるのが巣鴨の魅力のひとつではないかと感じています。

改めて木崎さんが考える、巣鴨の良さはなんでしょうか?

木崎さん
「また巣鴨に住みたいね」と言ってくれる方がいるところですね。最初に巣鴨に住んでいた人が、いろんな理由があって一度離れることがあっても、「やっぱり巣鴨が良かったね」「また住みたいね」と言っていただけることが一番嬉しいです。街の魅力というと、アクセスが良かったり、自然豊かだったり、商業施設が充実していたりなど、街によっていろんなスタイルがあると思うんですけど、それでいうと巣鴨の良さは、“また戻りたいと思える安心感”だと思っています。多くの方にとって、安心して戻ってこられるような場所として、これからもこの街を守っていきたいですね。

取材を終え、商店街へと帰っていった木崎さん。

その帰り道にも、木崎さんは多くの人に声をかけられていました。

自分が商店街の組合理事をできているのは、たまたま周りの人に恵まれたから。という木崎さんですが、親身になって住民の方の声に耳を傾けている姿は、長い時間の中で信頼を積み重ねてきた木崎さんだからこそ成せる、信頼関係によるものだと感じました。

帰りたくなる街・巣鴨。

どんな人でも受け入れる安心感は、木崎さんを中心とした商店街の方たちの温かさによって生まれているようです。

ぜひ、一度巣鴨に来て、その温かさに触れてみてください。

巣鴨地蔵通り商店街

取材・文=はるまきもえ

※掲載の内容は、記事公開時点のものです。情報に誤りがあればご報告ください。
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