かっこよい人

あきらめないで良かった!50歳から再び舞台へ。
小川菜摘さん「新人女優のような気持ちで常に全力です」

女優・タレントとして活躍する小川菜摘さん。
今年6月には明治座で上演される『中村雅俊芸能生活50周年記念公演』に出演する予定だ。
小川さんは1978年に中村雅俊さん主演の学園ドラマ『ゆうひが丘の総理大臣』の生徒役でデビュー。その後結婚し舞台の仕事からは離れるが、子育てが一段落した50歳から本格的に復帰し、以来10年以上にわたり数多くの公演で活躍している。
今回はデビュー時の『恩師』でもある中村雅俊さんと、46年振りに共演する小川菜摘さんに今作への意気込みと、第二の人生に挑む同世代へのエールを語ってもらった。

目次

中村雅俊さんとデビュー作以来の共演「女子生徒で今も続けているのはお前だけになっちゃったな」

中村雅俊さんの芸能生活50周年を記念する公演に出演する率直なお気持ちを聞かせていただけますか?

小川菜摘さん(以下、小川)
最初にお声掛けいただいた時は本当にびっくりしました!中村雅俊さんとは家がご近所ということもあって、食事に誘っていただいたりご自宅に遊びに行ったりするお付き合いはありましたが、これまでお仕事でご一緒したのはバラエティがほとんどでした。

私は50歳の時に本格的に舞台に復帰したのですが、この話をいただいた時、あきらめないで演劇を続けてきて本当に良かったなとつくづく思いました。中村雅俊さんの50年という節目の大切な公演に呼んでいただいて、再びお芝居でご一緒できるなんて本当に嬉しいです。

46年ぶりの共演になるんですよね。当時の、今でも印象に残っている中村雅俊さんとのエピソードはありますか?

小川
『ゆうひが丘の総理大臣』という学園ドラマに出ていたんですが、当時私は15歳で現役の高校1年生でした。だから自分の高校に通いながらゆうひが丘学園にも通っているような気持ちでした。

撮影の合間に宿題をしていると、中村雅俊さんが「何やってんだ?」って声をかけてくれて、宿題を見てくれることがよくあったんです。ドラマの中でもそれ以外でもずっと『先生』みたいな存在でした。

とても優しくて、偉ぶるところが全然なくて、スタッフや共演者、そして15歳の私にも分け隔てなく接してくれて、良い思い出ばかりです。今でもその優しさは全く変わっていません。本当に素敵な方です。

当時の女子生徒で、今も役者を続けているのは私だけになりました。10年に一度くらい同窓会が開かれるんですけど、中村さんに「女子生徒で今も続けているのはお前だけになっちゃったな」って言われた時は、なんだかとても感慨深かったですね。

26年間のブランクを経て、50歳で舞台役者への復帰を決意した理由とは?

タレントとしてすでに人気も知名度もある小川さんが、なぜ50歳から再び舞台に立ちたいと思ったのでしょうか?

小川
そもそも私の叔母が『珠めぐみ』という女優で、橋幸夫さんや北島三郎さんの相手役として舞台や映像に出ている姿を子供の頃から見ていたんです。叔母に憧れて私も舞台女優になりたいって思ってました。なので中学・高校の時は学校が休みになると叔母の付き人をさせてもらってたんです。

女優になりたいならオーディションを受けなさいと叔母に言われて初めて受けたオーディションが『ゆうひが丘の総理大臣』でした。そこで自分は芝居の基礎が全然できてないって痛感したので、今度は文学座の演劇研究所に入って1年間学んだんです。

でも、26歳で結婚してすぐに夫(ダウンタウンの浜田雅功さん)が東京に進出して、さらに子供も生まれたので、そんな中で私が演劇を続けたら家庭が回らないなって思ったんです。
なので仕事は続けていたけれど、稽古や地方公演で家を空けることが多い舞台はずっと封印してました。舞台を観に行くことも避けていました。見たら絶対自分もやりたくなってしまうので。

舞台への思いを持ちつつも、子育ての期間が長いブランクになってしまったんですね。2012年に再び舞台に復帰されましたがそれは何がきっかけだったんですか?

小川
50歳になった時、ちょうどドラマで共演していた渡辺いっけいさんから、「今度全員50歳の役者10人で『劇団500歳の会』っていうのを立ち上げるんだけど、菜摘ちゃんも一緒に舞台やらない?」って誘ってもらったんです。

家族に相談したら、主人が「もう子供に手がかかるわけじゃないんだから、残りの人生やりたいことやったらええよ。できる限り協力するから。」と言ってくれて、それで復帰を決意しました。

でも実は、『劇団500歳の会』のメンバーって、池田成志さんとか山西惇さんとか演劇モンスターみたいな人ばかりだったんです! 幸いだったのはブランクの間に私が演劇を全く観ていなかったことです。演劇界でもすごい人たちってわかっていたら恐れ多くてこの仕事は受けられなかったかもしれません。

稽古が始まってからは、自分があまりにもできなくて落ち込むばかりでしたが、「菜摘ちゃんがブランクあるのはわかってるから、間違えようがセリフを飛ばそうが俺たちがいるから大丈夫、楽しんでやりなよ」って言ってくれて本当にありがたかったです。皆さんの胸を借りて舞台に挑むことができました。ありがたい事に、今でも、その方々とのお付き合いは続いています。

それから10年後には『600歳の会』をやりました。次は『650歳の会』をやろうなんて話も出ています。なぜ650なのかというと、『700歳の会』だともう誰かがいなくなってるかもしれないからって(笑)。

最初に復帰した舞台で本当に素晴らしい縁をいただきました。このメンバーの中で復帰していなかったら、自信をなくして辞めていたかもしれないですね。

新しいことへの挑戦が頑張る活力〜新人女優のような気持ちで常に全力です

舞台復帰後は、今回の明治座のような大きな劇場から下北沢のザ・スズナリのような小劇場まで、精力的に幅広い作品に出られていますね。

小川
もうね、歳は取ってるけど新人女優の気持ちでやってるんですよ。どこの座組に行ってもまだまだ全然足りてないので。だからこそ、いろんなジャンルの舞台を経験したいんです。スズナリでも明治座でも、全力でその芝居をやるっていうのが私の目標です。

実は明治座の『滝口炎上(2015年)』という舞台で小川さんを拝見したことがあります。時代劇がとてもお似合いでした。

小川
ああ…! 私が初めて明治座に出させていただいたのがその舞台なんです。時代物は所作が難しいんですけど、時代劇に出ている叔母の姿を子供の頃からずっと見ていたので、叔母の所作を思い出しながら演じていました。

その後に梅沢富美男さんの明治座公演に呼ばれて、梅沢さんと二人で日舞を踊ることになったんです。日舞なんて若い頃に叔母の先生に少し習っただけだったので、最初はもう必死!必死でお稽古しました。

明治座で初めて梅沢さんと踊って、花道に行ってスッポン(花道の七三の位置にある小型のセリ)に2人で乗ってスーッて下がるのを経験した時はもう夢みたいでした。

今年もまた10月に明治座で梅沢さんの舞台に出るんですよ。この歳になっても新しいことに挑戦して、そこで少しでも成長を感じられるのは幸せですね。

素晴らしいですね。ブランクはすぐに乗り越えられたのでしょうか?そもそも50代になるとセリフを覚えるのも大変だと思うのですが。

小川
何度も読めばセリフは覚えられるんですよ。脚本をひたすら読み込むことですね。でも演技はそれとは別のスキルです。今度の公演では歌も踊りもあるので、私は人の二倍努力しないとできないので今からひたすら自主練・自主練です。やっぱりついていかなくちゃいけないし、そこは頑張らなくちゃいけない。 でも新しいことへの挑戦が頑張る活力になってます。

復帰最初の『500歳の会』の時なんですけど、稽古が終わってみんなでご飯行ったりすると、「どこどこの劇団〜が」とか「演出家の誰々が〜」みたいな演劇の話になるじゃないですか。それに私は全然ついていけなかったんですよ、ブランクが長すぎてちんぷんかんぷんでした。このままではダメだと思って時間が許す限りお芝居を見に行きました。

商業演劇も小劇場もミュージカルも歌舞伎も全ジャンル見ています。自分へのインプットとして、何か役の中で生かせるものがあるかもしれないと思って観劇しています。

梅沢富美男さんの公演の時は、梅沢さんを舞台の袖で食い入るように見ていました。女形の時の所作とかおじさん姿の時のお芝居とかもう全部です。梅沢さんってすごいんですよ! ご自分で『300年に1人の役者』っておっしゃってますけど、本当にそうです。大尊敬しています。

その後、梅沢富美男さん風な感じを小劇場の普通の芝居でちょっと取り入れてみたんですよ。そしたらすごくウケたんです!やっぱり全部身になってるんだなって実感しました。舞台で得たことをまた他の舞台に生かせるのはすごく楽しくておもしろいですね。

心の中に『推し』を持つと楽しみも交流も意欲も生まれてくるのでは?

一回長く仕事を離れてしまうと、一段落して第二の人生を考えた時に、ブランクで元の仕事に就くのが難しかったり、次にやりたいことが見つからなかったり、一歩を踏み出すことが難しい人はたくさんいると思います。小川さんからなにか背中を押せる言葉があればぜひお願いします。

小川
そうですね、何かを始めるって本当に大変ですよね。でもまずは、身近なところから自分の中の『推し』というか、楽しみや喜びを見つけることが大事だと思います。それは働いてお金をいただくことだけじゃなくても、例えば私はお料理がすごい好きなので、美味しいものを食べた時に「これどうやって作ってるんだろう」って家で再現してみたりします。

映画やお芝居を見に行ったり、韓国ドラマやK-POPとか何でもいいと思うんです。この俳優さんを追ってみようとか、そんな『推し』を何かひとつ作ると楽しみが増えますよね。
若い時に諦めてしまったことでも、勇気を出してもう一度始めてみると新しい友達ができたり、交流が広がったりします。それって本当に素敵なことですよね。

今の私にとっては舞台が『推し活』みたいな感じです。毎回すごく怖いし緊張もするんですけど、カーテンコールでお客さんが嬉しそうに拍手してくださったり笑ったりしてる姿を見ると、「よし!明日のステージも頑張ろう」ってすごく思います。一番幸せを感じる時間ですね。

初舞台の後に届いた夫と息子たちからの嬉しいメール

舞台に復帰して、これまでで一番嬉しかったことは何でしょうか?

小川
復帰した時の最初の舞台を見に来ていた主人と息子たちが、終わった後に同じようなメールをくれたんです。「なんや、お前は舞台がやりたかったんやな」とか、「お母さんって舞台の人だったんだね」って。
もう、ジーンときちゃいました。そうなのよ! お母さんは舞台がやりたかった人なのよって、そういう姿を見せられて本当に良かったなって思いました。

それまでバラエティでギャーギャー言ってるお母さんっていうイメージしかなかったと思うんです。主人も私が役者だということはもちろん知っていましたけど、舞台に出ている姿は見たことなかったんですよね。

今は私が出る舞台は時間が許す限り観に来てくれていて、家でもすごく協力してくれています。地方公演に行く時も長い稽古の時も応援してくれて、本当にありがたいです。

家族が背中を押してくれて応援してくれるのは嬉しいですね。舞台で一番嬉しかったこと、例えば印象に残っているカーテンコールとかありますか?

小川
やっぱり復帰してスズナリに初めて立った時のことですね。若い頃はスズナリに立つ機会がなくて、復帰後に、カムカムミニキーナの松村武さんの作/演出の作品で初めてスズナリに立つことができたんです。

その何公演目かのカーテンコールの時に、共演の深沢敦さんに突然「今日は菜摘からひとこと」って振られたんですけど、突然「私、スズナリに立てたんだ…」と感極まってしまいボロボロ涙が出てきちゃったんです。

泣きながら「本当に!今日は!!ありがとうございますぅ〜!!」って挨拶したら、敦さんに「あんたババァのくせに新人女優みたいに泣いてんじゃないわよ!」って笑われて、周りの俳優たちも「小娘みたいなリアクションしてんじゃねえよ!」ってゲラゲラ笑ってて、お客さんもみんな笑って、それがすごくいい思い出です。

スズナリって私にとってずっと聖地だったんです。だからあの瞬間は本当に20歳の新人女優みたいな気持ちになってました。舞台に立てることがただもうありがたくて、歳は取ってるけど気持ちはまだ若手みたいですね。

スズナリも他の劇場も、明治座も、初めての劇場に立たせていただいた時はその度にやっぱりグッとくるものがあります。

次はいよいよ明治座『中村雅俊芸能生活50周年記念公演』ですね。歌も踊りもあるとのことですが、小川さんはどんな役を演じられるのですか?

小川
コロッケさんの恋人役で、気は強いけど女としての可愛さもあるようなおもしろい役です。コロッケさんもすごい方だし二人のシーンも多いので一生懸命ついていかなくちゃと思ってます。歌もね、私も歌わせていただくんですよ。

今回は中村雅俊さんとの共演で思い入れも深いですし、一緒に出させていただくからには何か役に立ちたいなって思っています。あとはやっぱり泣いちゃうんじゃないかな、と思って自分でもちょっとドキドキしています。

とても楽しみにしています! これからも舞台を中心に活動されていきますか?

小川
はい、これからも演じることを中心にやっていきたいですね。
今年は10月にまた明治座さんで梅沢富美男さんの公演に出させていただきますし、12月には恵比寿で、拙者ムニエルの村上大樹さん演出のすごくおもしろそうなお芝居をやらせて頂く予定です。
今はだいたい年に5本くらい出させてもらっています。ありがたいですね。ちゃんと健康管理して体がきく限り頑張っていきたいです。

小川菜摘さんの舞台出演情報

『中村雅俊芸能生活50周年記念公演』

『中村雅俊芸能生活50周年記念公演』ポスター

昭和歌謡音楽劇とライブの二部構成で綴る、中村雅俊芸能生活50年の軌跡!
超豪華キャストが集結し 、圧倒的エンターテインメントをお贈りします。

【第1部】 『どこへ時が流れても~俺たちのジュークボックス~』
宮城県のとある田舎町。海岸近くにある「スター・リバー」は、50年前に星川誠の両親が開いたカフェ&バーである。
店は小綺麗でアメリカンレトロな内装だが、古くて汚いジュークボックスが異彩を放っている。何故なら東日本大震災で店は流され、ジュークボックスだけが形をとどめていたからだ。10年前、誠は店を再建する際、このジュークボックスを店内に置こうと決めた。そして2024年のある日、動かないはずのジュークボックスが音楽を鳴らし始める・・・。

  • 上演台本・演出・振付:玉野和紀
  • 脚本:堤 泰之
  • 出演:中村雅俊 コロッケ 久本雅美
    林 翔太 土生瑞穂/小川菜摘/松田悟志/玉野和紀/田中美佐子(特別出演)
    小林美江 我 膳導 兵頭有紀 松島 蘭 千葉さなえ 神谷玲花 小山侑紀 西田雄紀 千葉のぶひろ

【第2部】 『MASATOSHI NAKAMURA LIVE -look back with smile , look ahead with pride.-』
「ふれあい」「俺たちの旅」「恋人も濡れる街角」をはじめとしたヒット曲はもちろん、明治座ならではの趣向を凝らした演出で魅せる”デビュー50周年”を記念した特別なライブステージ

中村雅俊芸能生活 50 周年記念公演 – 明治座 公式サイト

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文=大関 留美子

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