かっこよい人

病魔を乗り越え編み出した健康体操
1年間の延べ受講者数60万人
健康体操研究家・己抄呼(みさこ)さん

健康体操研究家・健康アーティストとして多くの人の健康を助けるお手伝いをしている己抄呼(みさこ)さん。誰もが簡単にでき、即効性がある50代で編み出した「ろっ骨エクササイズ KaQiLa(カキラ)」は、口コミでファンを広げ、カキラを学んだカキラリストが全国で誕生し、ファンを広げている。ここに至るまでには、幾度も逆境が彼女を襲った。試練を乗り越え、50代で編み出した健康法とはどんなものなのか。健康のこと、人生のこと、これからのことを語ってもらった。

己抄呼(みさこ)
1958年、大阪府出身。健康体操研究家・健康アーティスト。1976年、当時、競泳の強豪選手を数多く輩出していた中百舌鳥スイミングに水泳コーチとして入社。スイミングスクール、スポーツクラブの支配人を経て、株式会社キッズ・カンパニーを杉野裕一氏と共に設立。2009年「ろっ骨エクササイズ KaQiLa(カキラ)」を考案。現在、健康エクササイズの開発、スポーツクラブ、医療機関等で研修、講演を行っている。NHK「ぐるっと関西おひるまえ」に出演中。
目次

夏でも涼しそうだからと入った水泳部でめきめき頭角を現す

独自の健康エクササイズを広めるために、日々奮闘している己抄呼(みさこ)さんは、とてもキュートな女性だ。時折、少女のような笑顔を見せてくれる。健康体操の原点となったのは、中学時代に始めた水泳である。高校を卒業後、水泳のコーチとして働き始めた己抄呼さんだが、水泳を始めたきっかけは意外なものだった。

己抄呼
姉がテニスをしていたんですが「暑い中でなんでなんでテニスやるんだろうって」思って。プールの中で泳いでいる姿を見て「涼しそう」って思って中学校は水泳部に入ったんです。私、バク転とか得意だったんで高校では器械体操をしたかったんですが、水泳で高校に入ったもんだから、高校も水泳部でした。大した成績は残してないです。

大した成績は残していないというが、全国屈指の水泳部で厳しく鍛えられ、1年生にもかかわらず、いきなり全国高校総合選手権大会(インターハイ)に、800m自由形で出場し、卒業まで3年連続出場を果たした。卒業後は、水泳コーチへの道に進むことになった。社会人の第一歩から指導者の立場でスタートされたんですね。

己抄呼
水泳しかできなくって。水泳コーチをしながらジャズダンスもやっていたんですが、エアロビクスが上陸したのを見て「私にもできそう」って思ってエアロビクスのインストラクター養成コースに入ったんです。でも私の方が理論的に勝っていました。水泳コーチをしている時に先輩方から身体の理論を勉強していたんで。エアロビクス・インストラクターを始めたんです。

会社設立後、病魔が襲う

己抄呼さんがエアロビクスのインストラクターになった1980年前半。エアロビクスは、社会現象になるほど流行し、時代は、フィットネス・ブームへと流れ始めた。子どもの頃からバク転が好きで、ダンスも好きだった己抄呼さんは、フィットネスクラブの支配人だった杉野裕一氏と出会い、1995年に株式会社キッズ・カンパニーを杉野裕一氏と共に設立し。己抄呼さん36歳の時だ。ところが・・・・

己抄呼
会社を設立と言っても最初は、ゴーグルを販売したり、業務委託で水泳を指導したりとなかなか軌道に乗らなかったんです。身体も壊してしまって。

会社設立後、さあこれからというときに己抄呼さんは、病魔に襲われた。甲状腺腫瘍の手術で甲状腺がなくなってしまう。甲状腺ホルモンを正常な量、分泌することができなくなり、自身の自立機能では代謝があがらないため、甲状腺のホルモン剤を一生飲み続けなければいけないと宣言された。このことが大きく己抄呼さんを変えていくことになる。
大きな試練だったと思うのですが、どうやって健康を回復していったのでしょうか?

己抄呼
薬を飲み忘れると、代謝が上がらないし、顔が太ったみたいにむくんだり。1年間くらいは、必死で声を出してやっとかすれ声が出る程度だったんです。

新しい仕事をスタートさせたばかりですし、声を出すお仕事でもあるので、不安だったんじゃないですか?

己抄呼
それがね。声は絶対、出るようになるって思っていたんです。子どもを見てくれている母もガンになったり、私も病気でふらふらだし、まわりから見たら最悪だったはずなんですけど、私、まわりが思うほど自分が辛いと思わなかったんです。

絶体絶命の状態のときに発揮された「天邪鬼精神」がひらめきを生みだした

柔らかい笑顔で答えてくれた己抄呼さんだが、当時、お子さんはまだ2歳。ある意味、絶体絶命状態だった。

己抄呼
身体が老けてきて、顔のしわとかも気になりました。女優さんは同じ年代でもあんなにきれいなのにって。だから、高い化粧品を買ったりもしたんです。母は「孫を見てやらないと」っていう気持ちがあったんで、頑張ってくれて。今、86歳になるんですが元気です。仕事はいろんなめぐり合わせがあって、アクアエクササイズを始めたんです。水の中でふわふわ歩くだけのエクササイズはどうも納得がいかなくて。重力に沿って動くだけでは筋肉に負荷がかからないんです。だから汗もかかないから寒くなるんです。私、天邪鬼だから、なんか違うと思って浮力を負荷にして踏みまくるという「ふみふみアクア」を考えました。これは、すごく運動になるし、プールにいながら汗もかくので、身体もあったまる。15分でばてるほどの運動ができるんです。誰もやっていなかったことなんで最初は相手にされなかったんですけど。日本代表で出席したフィットネスの総会で、大好評で、イタリア人なんか「フミ、フミ」って笑いながら真似してました。

この「ふみふみアクア」は、全米アクアエクササイズ協会主催で、世界38か国から、各国のアクアエクササイズインストラクターが集う、アクアのコンベンションである「国際アクアフィットネス総会」のアメリカ総会、イタリア総会の日本代表として発表し、各国の指導者から「Fumi! Fumi!」 と、高い人気と評価を得ることとなった。しかし、こうした評価は、同時に大きなやっかみの対象にもなり、軋轢を生んでいく。

己抄呼
天邪鬼なんで黒を白の方向で考えることで、結果的に色々な新しいものを創り出してきたように思いますが、そのことが、それまでその世界で中心的に活躍されていたような方々からやっかまれて排除の対象になったりもしました。自分が目立ちたいという気持ちはないんですが、どうしても目立ってしまって。「あの人の考え方は邪道だ」とか、「己抄呼さんは、引退した」って勝手に言いふらす方もいたりして。

ひどいですね。反論されなかったんですか?

己抄呼
私は何も言わないの。おとなしいくせになぜか目立つから、小さい頃から、けっこういじめられっ子でした。黙っていても目立つのなら、もう自分が前に出るしかないかなと。

なるほど。黙っていて目立つより、積極的に前に出て目立ってやろうとなったわけですね。

即効性があって、誰もが簡単にできて、しんどくない体操

その頃から「カキラ」の構想があったんですか?

己抄呼
はい。自分が大きな病気をしたこともあって、本当に運動が必要な人達を元気にしたいと考えるようになりました。

それが、カキラ?

己抄呼
そうです。普通、体操はだいたいしんどいでしょ。動く身体をつくらないといけないのではなく、その前にやることがあるんです。激しい運動は無理でも筋力がなくても身体に負担のかけない運動はないかと考えたんです。ろっ骨は身体の大黒柱である背骨とたくさんの関節でつながっています。呼吸と手の動きでろっ骨を動かすことで関節が動いて身体のひずみが改善されるんです。

こうして、様々な指導経験や身体の仕組みを研究していく中で、誕生したのが身体のカタイ方、筋力・体力の低い方、高齢者から、アスリートまで誰でもできるエクササイズ「ろっ骨エクササイズKaQiLa~カキラ~」である。2009年のことだ。カキラとは、関節のカ、機能のキ、そして楽になるのラである。骨や関節の動きを徹底的に研究し、解剖学上の裏付けをとった上でつくり上げられたものだ。

己抄呼
今でもね、うちにレッスンに来てくれた方に効果がでないと、私は自分を許せない。だから即効性があって、誰もが簡単にできて、しんどくなくてっていう体操をつくることにしました。筋肉をこう動かせば、こう身体の他の部分が動くというような理論も確立していないし、本もないんです。私、自分の身体を悪くしてよかったなって。

さりげなく笑顔で話してくれたのだが、試練が来ても前向きに立ち向かい、あきらめない強さがそこにはあった。 身体がうまく動かない方でも簡単にできる運動を教えていただけますか?

己抄呼
ありますよ。手にひらと手のひらをこすり合わせるだけでも肩甲骨の後ろが動きます。
手の中指と薬指と小指は、背中をコントロールするんです。毎日、手をこすり合わせるだけです。

常に新しい動きや運動を考案されていますが、今後の目標をお聞かせください。

己抄呼
日本のよいことってたくさんあって、食べ物も含めた生活の知恵を提案していきたいと考えています。日本は気圧変動が大きいので、内臓が膨張したり縮んだりするんですね。夏は気圧が上がるでしょ。細胞や血流をよくするために盆踊りや阿波踊りは手をあげて踊るんです。昔からそれに対応した四季折々の食べ物があるわけです。
今、日本人に必要な栄養はビタミンとミネラル。このビタミンとミネラルを十分摂るために必要な簡単な食べ物があるんです!
抹茶、豆乳かキノコ、カタクチイワシ、棒寒天です。これを毎日の食卓に加えれば、1日の食事に必要なミネラルとビタミンが摂れます。
寒天は使いにくいと思われますが、ごはんを炊くときにちぎって加えればいいし、豆乳もみそ汁に入れたりしてもいいです。

最後に1日の終わりに身体をリセットする運動を教えてもらった。

己抄呼
吸う呼吸を意識してやってみてください。
息を吸うことで、ろっ骨が開いて胸郭が広がり柔軟になります。

身体をリセットする運動方法

  1. 左手を上に引き上げ、手のひらを頭の後ろに当てる
  2. 左の肘を軽く曲げる(斜め45度)
  3. 顔は上げている手(左手)の反対側に向き、顎を引く
  4. 右手の中指、薬指、小指を左ひじに添え、上に持ち上げる
  5. 左ひじを上に持ち上げながら背中を膨らませるように大きく息を鼻から吸って、口から吐く
    (同様の動作をしながら呼吸を2回から3回繰り返す)
  6. 最後に、両手をやさしくおろす

己抄呼
背中と首回りがすっとして、1日の疲れがとれます。
吸って吐くを繰り返すことで、ろっ骨が動き、交感神経が高まります。
1日のリセットにぜひやってみてください!

すぐにやってみたところ、頭がすっきりした感じになりました。
みなさんもぜひ、お試しください。
己抄呼さん、ありがとうございました。

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取材・文=湯川真理子

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