食べ歩き軒数4800軒以上! 元フレンチシェフの京都グルメタクシーがあなたのためだけにおいしい京都をご案内!

京都に行ったら食べたいものはなんですか? 和菓子に京料理、老舗の天ぷら屋、湯豆腐に町中華、抹茶スイーツにケーキにパン、ガイドブックをいくら見ても迷ってしまう魅力がいっぱいの京都。行きたい店も神社もある。イメージは沸いてきてもなかなかお店を探すのは至難の業だ。京都はなかなか奥深い。京都中の店を食べ歩くこと4800軒以上、店の雰囲気、味、値段もお客さまの希望に合わせ、イメージ通りのお店に案内してくれる、そんなちょっとドラマに出てくるような観光タクシーが京都にある。元フレンチシェフの岩間孝志さんが始めた唯一無二の“京都グルメタクシーⓇ”である。岩間さんに話を伺った。

- 岩間孝志(いわまたかし)さん
東京都出身、京都在住。フランスでの料理修行を経て、ホテルのメインキッチンに勤務。 その後、タクシー業界に転身し、2010年に「京都グルメタクシー」を創設。現在は個人タクシー運転手として、食と観光を融合させた唯一無二のサービス を提供している。京都府文化観光大使。著書やメディア出演など幅広く活躍中。
京都グルメタクシー(個人タクシー)とは、岩間さんが2000年から情報収集を始めた京都の食べ歩き情報をベースに、観光案内とおいしいお店にお客さまを案内することを一体化した貸し切り観光タクシーである。車に乗るだけで目的地に到着し、岩間さんの膨大なグルメ知識の中からお客さまが希望する店に案内してくれる。リピーター率約30%、何度でも乗りたくなるのである。岩間さんは最初からタクシー運転手を目指したわけではなく、挫折の度に新たな道を切り開き失敗を糧にしていった。
自分は何やってもダメや!大学受験で15校を受け、すべて不合格
運転席が一番落ち着くという岩間さん。それならばと車内でのインタビューをさせてもらった。取材の申し込みをしたときに「すごい挫折があったんです」と岩間さんから聞かされた。人生、まるごと投げ出してしまいそうになったのは青春真っ盛り、高校3年生のときである。
岩間
やる気もなくして空白の期間のような時期が2年ほどあるんです。大学受験で15校受験してすべて落ちたんです。この頃の記憶があんまりないんですよ。何にもやる気がなくなって、1人で家の周りをグルグル歩いてたりしてました。
ご両親も心配だったでしょうね。どうやって立ち直られたんですか?
岩間
はい、かなり心配をかけました。自分は何をやってもダメやと。受験は英語がまったくできなかったんです。人生に絶望していたんですが、ふと小学校の卒業アルバムをめくったときに「将来はコックになる」と書いていたんです。そんなことを考えていたのかと思って、大阪の辻調理師専門学校のフランス校留学コースに入学しました。
辻調理師専門学校のフランス校留学コースというのは、学校で1年間基礎を学んだ後、フランス・リヨン郊外にあるの辻調グループフランス校へ留学し、ここでの実習と、地元の一流店で5ヶ月間の実地研修を体験するコースだった。
岩間
英語ができないというのがトラウマになっていたんですが、フランスでの研修はフランス語ができないと強制送還されるんですよ。フランスではクヨクヨしている間もなかったです。フランス語ができないと料理も覚えられないので必死でした。英語はまったくできなかったのにフランス語は覚えられたんです。日本に帰った時に両親には「180度変わった、打たれ強くなった」と驚かれました。
帰国後、京都のホテルのレストランで料理人として働き始め、このまま料理人の道へと進むはずだった。料理人としての道を歩み始めた1年後、再びフランスへ行こうと決めたのだが…
料理人からタクシー会社へ転職、茶団子がきっかけでローマ教皇と謁見
岩間
フランスのミシュラン店を紹介してくれる方がいたので、フランスへ行くためのお金を貯めようと、ホテルを辞めてMKタクシーの観光課に所属しました。
なぜ、タクシー会社を選ばれたのですか?
岩間
MKタクシーは接客がいいと評判でした。おしゃべりができなといけないんです。しゃべりが下手だったんで、MKタクシーに行けばしゃべりがうまくなるのではという気持ちがありました。僕はどうもストイックなところがありすぎて、自分が苦手なところ難しいと思うところへ行きたがる傾向が昔っからあるんです。
岩間さんが所属したのは観光課である。お客さまとの会話はかなり重視されそうだ。とはいえ、フランスへ行くための転職だったのだが、あろうことかフランス行きの話が頓挫してしまい、奇しくも岩間さんはタクシー運転手としてのキャリアを積んでいくことになるのだ。
タクシー業界に入ってよかったと思うことはありますか。
岩間
はい。MKタクシーに所属していたときに、よく送迎をさせていただいていたお客さまに声をかけていただいて、ローマ教皇と謁見できたんです。
えっ、あのローマ教皇ですか?
岩間
そうです。そのお客さまを宇治にお送りした帰りに茶団子を買いたいが、どこがいいかと聞かれたので、お勧めのお店をを7件、克明に説明をつけて紹介しました。この頃から京都の食べ歩きをしていたので、リストはあったんです。茶団子の紹介の仕方に誠意を感じていただき、信頼されたんですね。ご縁とご縁の先がローマ教皇だったんです。目の前でローマ教皇(ヨハネ・パウロ2世)に謁見できたことは、この上ない思い出になりました。
フランス語のできる岩間さんを通訳代わりに連れて行ってくれたのだそうだ。余談だが、京都の宇治といえば、お茶処で茶団子屋が多く、しかも奥が深い。岩間さんは抹茶の茶団子だけでなくほうじ茶の茶団子までリストに加えていたのである。料理人になるためにフランスへ行き、フランス語を覚えたことも食べることが好きで料理に詳しくなったこともすべて無駄ではなかったのだ。
タクシー+グルメ+食べ歩きを合体させた観光タクシーの誕生
岩間さんは、グルメサイトに2000年から“京都口コミ食べ歩き情報”を提供していたという。2000年といえば、まだインターネットの普及が始まったばかりでネット接続も今のようにスルスルとはいかなかった時代である。
岩間
誰が見ているんだろうと思いましたが、アクセス数が1,000件を超えていました。
それはすごいですね。この頃から今の京都グルメタクシーという構想があったんですか?
岩間
ありました。結婚をして子どもも2人いましたし、タクシー業界のバブルも崩壊していたこともあって、まともなことをしていてもダメだと思っていました。タクシー、元フレンチのシェフが紹介するグルメ、食べ歩きをしてきた情報を合体させるという構想が生まれたのはこの頃です。
大学受験の失敗による挫折、フランス料理の料理人、そしてタクシー乗務員、加えてそれらの途中に父親が経営していた和装繊維業界での製造、デザインと異なる職業を経験してきたことはすべて京都観光に活かされ、岩間さんは2010年に京都グルメタクシーを創設した。
岩間
最初は鳴かず飛ばずで全くダメ、あきませんでした。
それでも食べ歩きで情報を集めることは続けていた。それでも高級料理店に足蹴く通うことは金銭的にも大変だった。
岩間
僕の噂を聞いて、乗車してくださったお客さまのご希望が京都の高級なお店ということでした。そのとき、自分が食べたことのないお店を紹介したんです。かなりの高級店です。すると「5分で料理が出てきた。ここは自分が望んだところではない」とお客さまが憤慨されて、君はここで食べたことがないんだろうと、説教されました。5分で出てくるということは、作り置きです。ただ、そのお客さまは僕に説教した後に、料金の3倍のお金をくださって「これで好きなもん食べておいで」と言ってくださいました。ありがたかったです。
このときの経験は、自分自身で食べ歩いた店を紹介することの大切さが身に染みた。グルメタクシーを名乗る以上、ガイドブックでは読み取れない、生の情報を伝えることが大切であり、他の観光タクシーにはない魅力があることが岩間さんの誇りでもある。2010年に開始した“京都グルメタクシー”はお客さま一人ひとりの要望に加え、その方の気持ちを汲み取り、お客さまが望むお店に案内する。唯一無二の観光タクシーとして徐々に定着し、2015年には、個人タクシーの“京都グルメタクシー”を開業した。コンセプトは「京都観光とガイドブック不要の美食優良店をご案内」である。
食べ歩き軒数4800軒以上、お勧めは約800軒!リピート率30%のわけは?
個人タクシーをスタートさせた2015年には、嬉しいことがあった。土曜ワイド劇場「美食タクシー殺人レシピ 元料理人ドライバーと女刑事夫婦!!高級料亭の秘密が呼ぶ連続殺人!?若さの橋に塗りこめられた過去」で主人公のモデルになり、岩間さんも出演したそうだ。主人公はフランス帰りの元シェフ役という設定で、名優、中村梅雀さんが務めた。妻役は賀来千香子さんだったそう。
食べ物には好みもあるので選択が難しい時もあると思いますが、どのように配慮されているんですか?
岩間
お客さまには日常を忘れて楽しんでいただきたいというのが一番ですので、予算、ジャンル、お客さまの出身地などをお伺いして、お客さまと相談しながら決めていきます。女性1人のお客さまもいらっしゃいますよ。中には100回以上、リピートしてくださっているご夫婦もいらっしゃいます。
どのお客さまがいつどの店に行ったのか、どんなコースを回ったのかはすべて記録しているという。
特に記憶に残っているお客さまはいらっしゃいますか?
岩間
以前、女性2人で乗車された方がいましてね、お昼の懐石料理が食べたいとおっしゃったんです。ただ店の名前も場所も不明でした。小学校の時におじいさんに連れて行ってもらった店だというんです。店の名前も場所も不明でしたが料理を覚えていて、ワサビがこんな感じで、西京みそを使ってて、氷魚(ひうお)があったと説明してくれたんです。それならと、思いつく店にお連れしたら、ドンピシャでした。「このお店です、おじいさんに連れて行ってもらった店です」と、大層喜ばれました。
おいしいもの、食べたいものに出会えると人は幸せになる。岩間さんの人生の節目節目に“おいしいもの”が登場する。フランス料理、茶団子、おじいちゃんに連れて行ってもらった懐石料理店もそうだ。タクシーの乗務員時代にも忘れられない乗客を乗せたことがある。このときも“おいしいもの”の物語が関係した。
岩間
京都駅で顔色の優れない女性のお客さんを乗せたんです。目的地も言わず山の方へ行きたいというんです。連れて行ったらあかん。直観的に思いました。交番に連れて行くこともできたんですが、私自身が今までたくさん失敗しているので、自分の失敗談を話したんです。そのひとつがゲームセンターでパンチゲームをして骨折した話でした。そしたら大笑いしてくれたんです。その後に、京都で創業以来「唐板(からいた)」という手焼きせんべいだけを作り続けている水田玉雲堂(みずたぎょくうんどう)さんへお連れしたんです。
「唐板」は、863年(貞観5)に疫病が流行ったときに、疫神を鎮めるために神前に供えられた煎餅である。しかし、応仁の乱のために廃絶してしまう。水田玉雲堂の先祖は古書を頼りに、途絶えていた唐板の製法を受け継ぎ、疫病除けの煎餅として、応仁の乱の後に再興したのだそうだ。
岩間
人は失敗もする。こうして一度はなくなってしまった「唐板」も復活しました。いつかあなたを頼りにする人も現れるはずです。そんなことを言って唐板を自腹で買って手渡しました。その女性は、お土産に持って帰ると言って元気を取り戻してくれたんです。今でも忘れられません。
鞍馬口駅にほど近い場所にある水田玉雲堂は今も唐板ひと筋に暖簾を守り続けている。
京都中のグルメ、名所旧跡を極めた岩間さん。タクシーの運転手で京都府文化観光大使に選ばれているのは岩間さんだけだという。
岩間
大失敗も重ねてきましたが、失敗を糧にしてもらいたいです。今では大学受験に失敗してよかったと思っています。
これからも仕事を続けたいので、食べ歩きをする以外のときは、おかゆやお茶漬けですましているという岩間さん。京都グルメを極めたいが元気で仕事を続けていくためには健康が大事なのでと岩間さん。お客さまがおいしいと思えるものを見つけ出し、お客さまが笑顔になってもらえる旅をしてもらうために今日も岩間さんが運転する“京都グルメタクシー”は、唯一無二の京都を案内している。
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