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「キネヅカ」プロジェクト誕生前夜。 藤村靖之博士と話した〜シニアのしごととマインドセット〜

「キネヅカ」スタートより遡ること二年前、2015年の勤労感謝の日。「シニアの仕事とマインドセット」をテーマにしたトークイベントを開催しました。

ぜひこの機会に読んでいただきたく、トークイベントの様子をご紹介いたします。

目次

電力をいっさい使わない家庭用機器を発明・設計する「非電化工房」主宰者である藤村靖之氏(71歳 ※イベント当時)をゲストに迎え、キネヅカの納谷と有村の2名が登壇。

藤村靖之
発明家。工学博士。大手企業のエンジニアとしてプラズマなどの開発を手がけた後、1984年に独立。現在、栃木県那須町で非電化工房を主宰し、電気を使わ ない『非電化製品』の発明や、電気に頼りすぎない生活を提唱。
有村正一
色々なしごとを経て、良い仕事をつくりだすことを目的とした株式会社budori(ブドリ)を2007年に設立。
納谷陽平
株式会社budoriのWebディレクター。社内の新規事業として「キネヅカ」を企画。

約2年前のイベントですが、キネヅカの誕生経緯からシニア雇用のメリット、現状のシニア求人が抱える問題点など、超高齢化社会の日本にとって外せない数々のテーマでトークが展開されました。

超高齢化社会の労働力不足を解決するための「キネヅカ」

「私は30代後半になってから、親の定年退職や自身の結婚などを契機に、だんだん老後について考えるようになりました。けれども、世の中のニュースを見ていても、これといって貯蓄もないし、健康にも自信がないし、日本も将来どうなるかわからない。そういった思いからたどり着いたのがキネヅカという事業です」と、納谷がキネヅカ誕生の経緯を話しました。

超高齢化社会の日本では将来的に労働力が不足し、年金制度の不安もささやかれています。それらの問題を解決するために立ち上がったのがキネヅカです。「昔取った杵柄」という言葉がありますが、そこに親しみを持たせるためにカタカナ表記の「キネヅカ」というネーミングにしたとのこと。

シニアに仕事をつくり出したい、シニアや企業の意識を変えていきたいということで、藤村先生にアドバイスをいただきたい! と思ったのが本日のトークイベントの趣旨のひとつです。

藤村先生とのトークの前に、現在の「シニア雇用」事情をお話ししますね。

モスバーガーと加藤製作所、シニア雇用で成功した2社

シニアを積極的に採用している2つの企業があります。そのひとつがモスバーガー。モスバーガー五反田店は、在籍するアルバイトのうち約2割が60代以上です。学生と比べてシニアは時間の余裕があるため、早朝や深夜に働くことが多いようです。また、お客さんからの評判もよいとのこと。モスバーガーは特別にシニア層を募集したわけではなく、昔からパートで働き続けて、気がついたら60代以上のアルバイトが増えていったそうです。

もう1社が、岐阜県にある加藤製作所です。国産初のジェット旅客機、MRJのプロジェクトにも関わっているプレス板金加工業の老舗です。10年以上前からシニア雇用に取り組んでいて、現在では社員の約半数が60代以上となっています。同社は金属加工が中心の企業ですが、多品種小ロットの受注に対応するためには平日だけでなく土日も工場を動かす必要がありました。そこでシニアを雇用して365日の稼働を実現しています。

加藤製作所『意欲のある人、求めます。ただし60歳以上』(PHP研究所)

シニアを雇用することは企業にとっても大きなメリット

「営業経験者であれば、交渉技術、ビジネスマナー、若手の人材育成などは立派なその人の“キネヅカ”です。専業主婦だって、手料理や掃除の技術、片付け、子育て、家計の管理など、すべてがキネヅカになり得ると思っています」。そう話す納谷が思い描くのは、誰もが “キネヅカ”というキーワードを気軽に使える社会です。

シニアを雇用するメリットは企業にもあります。時間に余裕のあるシニアであれば、土日だけ、早朝だけといったワークシェアを進めやすくなります。年金受給者であれば、年金受給額に影響のない範囲で働くこともできます。貴重な技術や知識、経験を持つシニアには、定年後の空き時間を活用して企業の相談役になってもらえば、雇用のハードルも下がるでしょう。

核家族化の進む日本では若者と高齢者の接点が希薄になりがちですが、シニア雇用によって、社内の多様化が進むこともメリットとして挙げられます。

~ここでゲストの藤村氏が「シニアが第二の人生に進むうえで、治りようもない不治の病」というシビアな指摘をします~

何十年もかかって築き上げてきたプライドを捨てられるか否か?

藤村
「ナントカ大企業のナントカ取締役だった、みたいなプライドにしがみついたまま、老後を過ごしても、なんの面白いこともない……と、僕は思うんだけどね。それよりもナントカ大企業のナントカ取締役だった自分が、若いお嬢さんとタメ語で対等に語り合えるんだぜっていうね。そんなふうにプライドをシフトできればいいんだけど。でも、おじさんたちが何十年もかかって、ガチガチに築き上げたプライドを変えるっていうのは、精神論じゃ無理なんですよ。方法論が必要です」

納谷
そんな「ガチガチに築き上げたプライド」は、いかにして取り除くのでしょうか。

藤村
「おじさんっていうのはね、自慢、合理化、批難ばかりです。そこから、ワクワクドキドキしたなにかを生み出せるかというと、無理なんですね。だから、事前にトレーニングが必要。厳しくちゃだめ。トレーニングそのものをワクワクドキドキしながら楽しまないと」

有村
「以前、私が参加した藤村先生の発明起業塾でのエピソードをちょっとお話ししますね。2002年、受講していた発明起業塾での合宿のことです。そこで“200個のビジネスモデルを考える”という課題がありました。
考えなければ寝てはいけないというスパルタで(笑)。参加者の中にはひとつ出るまでに3時間ぐらいかかる人もいるんです。新しいことを考えたことがない人は、それくらいの時間がかかるんですよ」

藤村
「10個や20個なら、長く生きてる人は過去の経験からひねくり出しちゃうんですよね。でも、それでは壁を飛び越えられない。その壁を飛び越える方法が、100個のビジネスモデルを考えることです」

納谷
「それが、この課題の意図なんですね」

藤村
「そう。苦し紛れに20個出すけども、そこから先にいこうと思ったらね、やり方を考えなければ無理です。必ず何か方法論を考えなければ、出てこなくなります。大事なのは、自分が過去にやったことがないことに踏み込むことです。
そうすると、好きなことが見つかりやすい。でも、それまで会社命でやってきた人は、好きなことがないんですよ。これまでは義務感に満ちて、社会のため家族のため働いてきたかもしれないけど、ここから先は自分のためにやってほしい」

有村
「“最初からキャリアを活かす”ことについても教えてください」

藤村
「企業で40年、50年頑張って生きてきた人が、まったく新しいことをやろうといったってね。最初は若い人の方が早いかもしれないわけです。
だけど、後から何十年ものキャリアが活きてくるわけです。じわじわとね。直接は関係ない仕事だとしても、必ず後から出てきますよ。キャリアの差が。若い人には敵わないかも、恥かくんじゃないだろうか、という不安が最初はあるけど、自分のキャリアに自信を持つことが大切」

60歳を超えたら人生は「愉しむ」

納谷
「発明の専門家である藤村先生に、ズバッとおっしゃっていただきたいのですが、“キネヅカ”というネーミングはいかがでしょう?(笑)」

藤村
「僕は言葉遊びが好きなんだけど、まず、みんな“カネヅ(ズ)キ”でしょう? お金が好きだから、本当はできることがたくさんあるのに、プライドが邪魔して“キヅカネ(ー)”と。そして、若い人の話なんて絶対聞かない。
“キカネーゼ”で“キカネーヅ”。カネヅキで、キカネーヅな人たちに、自分たちが持っている“キネヅカ”を気づかせるという意味なんですか?」

有村
「さすが! 見事な言葉遊びです!」

納谷
「まったく意図していませんでした。そうですよね。大切なのは、これらの思い込みを無理矢理外すのではなく、ワクワクドキドキするような方向に持って行ければ面白くなるということなんですね」

有村
「けれども、これまでの日本的な古い考え方だと、“仕事というものは、辛くて苦しいもの”という固定観念が残っているのも事実です……」

藤村
「定年後に働くからには、もっと愉しまなきゃ損だ、っていう考え方にシフトしないとね。せっかくもう60歳にもなったんだから、これからの人生は思いっきり愉しむ。愉しむことを主題にやった方がいい。愉しんで、かつ自分が社会的存在であることを自覚できること。みんな誇り高く生きたいよね。日々が喜びに満ちていて、そして誇り高く生きられること。大勢の人が求める人生の幸せって、そういうことだと思うんだ」

キネヅカが目指すのは、「年を重ねたら、こんな未来がある。こんな働き方もあるし、こういう幸せが待っている」といった希望を若者が持つことができる未来です。
「定年退職=リタイア」という枠にとらわれることなく、生涯現役でいること。シニアが働くことで心身の健康を維持して、仕事を通じて生きがいを見つけていく。そんな社会をキネヅカは目指しています。

文=舩山貴之

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